2010年7月30日金曜日

Poverty Trap-働けど貧しい

最近、poverty trap という英語表現を知りました。

失業していた人が仕事を見つけて働き出したとしても、それに伴い、生活保護等の政府からの手当てや控除類が減額されてしまい、貧しい状態から抜け出せない、そうしたことを意味する言葉です。

全国の一部の地域で、生活保護支給額と最低賃金の逆転現象が起きていることが問題になっている中、もっと知られてもいい英語表現です。

ただし、poverty trap は、違う意味で使われることもあります。それについては省略。

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最低賃金の引き上げが議論になっていますが、最低賃金を引き上げると、かえって失業率が上がる可能性があるのが難しいところです。

教科書的な説明をすると、完全競争市場では、最低賃金の引き上げは経済理論上失業者を増やす結果になります。直感的に言うと、低い賃金なら雇ってもらえた人が、雇われなくなるのです。例えば、ひきこもりの人が社会参加のきっかけとして始める低賃金の単純労働などは、最低賃金の引き上げでなくなってしまいやすそうな仕事です。

しかし、完全競争市場ではなく、企業が一つしかない需要独占の市場では、最低賃金の上昇が、失業率を上昇させる可能性が理論上あります。

実際のところはどうなのか、様々な実証分析が主にアメリカで行われてきましたが、現在のところ、経済学者は、最低賃金の上昇は失業率を増やすと考える傾向があります。


なお、poverty trap という表現は、Pocket Oxford English Dictionary(POD) で知ったのでした。この辞書をパラパラと引いていると、poverty trap という言葉がよく偶然目に入ります。

2010年7月28日水曜日

やさしいひきこもり英語-insecure, wallflower ほか

■ insecure [形 adj]

色々な意味がありますが、自分に自信が持てないという意味があります。be insecure about という使い方をすることがあります。

■ commencement ceremony [名 n]

直訳すれば「始まりの儀式」ですが、高校や大学の卒業式、学位授与式のこと。卒業は新たな人生の始まりということなのでしょう。ですが、中には卒業後にひきこもってしまう人もいます。こうした人にとって、commencement ceremony は、結果的にひきこもりの始まりのための式典になってしまいます。

■ apprenticeship [名 n]

見習い(期間)、実習(期間)などといった意味があります。

先日公開されたイギリスのNEETに関する報告書 Against the odd - Re-engaging young people in education, employment or training - の中で、この単語をよく見かけました。NEETの若者が、企業で apprenticeship として働くことを行政は促しています。

■ detached [形 adj]

色々意味がありますが、「孤立した」という使い方をすることもあるようです。Against the odd の中では、"detached young people" などという使い方がされていました。ただ、こういう用例は珍しいかもしれません。

■ ne'er-do-well [名 n][形 adj]

役立たずとかろくでなしといった意味です。私のことです。ne'er とは、never のことでしょうか。

英和辞典(紙の辞書)で NEET の項目を探していたら、すぐ近くに見つけました。

■ wallflower [名 n]

インフォーマルな表現で、パーティーなどでパートナーのいない女性、皆の輪に入れないシャイな女性のことを言います。壁際に立っている女性ということなのでしょう。日本語でそのまま「壁の花」と言うこともあります。

2010年7月26日月曜日

英語のsabotageは「怠業」ではない

怠業することを意味する日本の俗語「サボる」は、フランス語の sabotage(サボタージュ)からきた言葉……というのは有名な話です。

英語にも、やはりフランス語由来の sabotage という言葉があります。しかし、これを「怠業」「怠業する」という意味と考えると、えらい間違いです。

フランス語のことは私にはよく分かりませんが、少なくとも英語でいうところの sabotage は「工作」「工作する」というような意味です。ここでいう「工作」とは、「図画工作」の工作ではなく、「破壊工作」「妨害工作」「北朝鮮工作員」といった意味の工作です。

先日来日して話題になった金賢姫(キムヒョンヒ)元死刑囚を、Japan Times は "Ex-North saboteur" などと表現しました。saboteur とは sabotage を行う人、つまり工作員という意味です。

こうした事実を踏まえると、sabotage という行為が、とたんに恐ろしく思えてもきます。気の弱い私などは、「俺、サポステ、サボろうと思うんだ」などという会話を耳にしようものなら、この人はサポステで何か破壊工作でもやらかそうとするのではないかなどとあらぬ想像を一瞬してしまいそうです。

※ サポステ:地域若者サポートステーション。ニート等の人を対象とした通所型の自立支援施設。厚生労働省が全国のNPO等に委託して行っている。

そういえば、私が高校生の頃、英語圏ご出身の先生が「サボる」という日本の俗語表現を妙に気に入っていらしたのを覚えています。ある日などは、職員室で、大変上機嫌に「サボる!サボる!アッハッハーッ!」と、この表現を連呼していました。この先生は、英語でいうところの sabotage の意味をやはりご存知だったのでしょうか。

2010年7月18日日曜日

教科書100回音読したぐらいで、暗記なんかできるか

ベストセラーとなった野口悠紀雄『「超」勉強法』で、英語の勉強法の一つとして、教科書を丸暗記する方法が紹介されました。なんでも、20回も音読すれば、文章を自然に覚えてしまうというのです。

それで、私も試してみたことがあります。私が好んで聴いていたNHKラジオ「ビジネス英会話」(現「実践ビジネス英語」)のテキストを20回音読してみました。自分にはちょうどよいレベルの教材でしたし、音読にはほどよいボリューム、内容も私には面白かったので、無理なく音読暗誦できるだろうと思えたからです。

ところが、文章を覚えるまでには至りませんでした。20回で足りなければ50回、それでも駄目なら100回と音読を繰り返しました。最終的に130回以上音読したのですが、テキストの内容は丸暗記どころか、ほとんど頭には入りませんでした。テキストの100回以上音読はしばらく続けたのですが、いつまで経っても同じ結果でした。

音読は、漫然とやっていたわけではありません。記憶に定着するように、少しずつ間を空けて試みるなど、工夫はしていたつもりでした。にもかかわらず、この結果です。

野口氏は20回音読で暗誦できたようですが、私は仮にその10倍の200回読んでも、テキストを暗誦できた自信はありません。私は頭が悪すぎるのでしょうか。それとも、野口氏が頭が良すぎたのでしょうか。

結局、テキストの音読暗誦は、自分には向かないのだと判断し、やめてしまいました。もしかしたら500回、ないし1,000回音読すれば暗記できたのかもしれませんが、それだけの回数テキストを音読する時間があれば、別の勉強方法を試した方が効率的ではないかと思われたからです。ですが、また音読暗誦を試してみようかと考え始めているところです。

2010年7月14日水曜日

省庁の英語名

省庁の英語名をまとめてみました。英語名の出典は、各省庁のウェブサイトです。

■ 内閣:Cabinet

◆ 内閣官房:Cabinet Secretariat

◆ 内閣法制局:Cabinet Legislation bureau

◆ 人事院:National Personnel Authority

◆ 内閣府:Cabinet Office
○ 宮内庁:(The) Imperial Household Agency
○ 公正取引委員会:Japan Fair Trade Commission
○ 国家公安委員会:National Public Safety Commission
・ 警察庁:National Police Agency
○ 金融庁:Financial Services Agency
○ 消費者庁:Consumer Affairs Agency

◆ 総務相:Ministry of Internal Affairs and Communications
○ 公害等調整委員会:Environmental Dispute Coordination Commission
○ 消防庁:Fire and Disaster Management Agency

◆ 法務省:Ministry of Justice
○ 公安調査庁:Public Security Intelligence Agency

◆ 外務省:Ministry of Foreign Affairs

◆ 財務省:Ministry of Finance
○ 国税庁:National Tax Agency

◆ 文部科学省:Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology
○ 文化庁:Agency for Cultural Affairs

◆ 厚生労働省:Ministry of Health, Labour and Welfare
○ 中央労働委員会:Central Labour Relations Commission

◆ 農林水産省:Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries
○ 林野庁:Forestry Agency
○ 水産庁:Fisheries Agency

◆ 経済産業省:Ministry of Economy, Trade and Industry
○ 資源エネルギー庁:Agency for Natural Resources and Energy
○ 特許庁:Japan Patent Office
○ 中小企業庁:Small and Medium Enterprise Agency

◆ 国土交通省:Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
○ 観光庁:Japan Tourism Agency
○ 気象庁:Japan Meteorological Agency
○ 運輸安全委員会:Japan Transport Safety Board
○ 海上保安庁:Japan Coast Guard

◆ 環境省:Ministry of the Environment

◆ 防衛省:Ministry of Defence


[コメント]

省は英語で Ministry、庁は Agency、委員会は Commission です。特許庁、海上保安庁、運輸安全委員会は、この点、例外的です。

文部科学省は、Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology と長ったらしい名称ですが、日本語名よりもこちらの方が、省が扱っている分野がはっきり分かるとは思います。総務相も、英語名の方が分かりやすく感じます。国土交通省の英語名には、日本語名にはない Tourism(観光)が入っています。

Labour に Defence と、イギリス式綴りですが、なぜなのでしょう。

2010年7月7日水曜日

やさしいひきこもり英語-discouraged, diffident ほか

■ discouraged [形 adj]

encouraged の反意語で、やる気をそがれたとか、落胆したといった意味です。

労働統計に関するものを読んでいると、ときどき discouraged workers という言葉を目にします。これは、雇用情勢がよくないため職探しを諦めた人のことを意味します。日本で言うニートには、この discouraged workers が含まれていると考えられます。

discouraged workers は求職活動をしていないため完全失業者にはカウントされません。雇用情勢が改善しても失業率がなかなか上向かないことがありますが、それは、こうした人たちが職探しを再開したから、という説明を聞くことがあります。

■ diffident [形 adj]

シャイだとか、自分に自信がないといった意味です。different ではありません。語源も違います。Diffident is different from different.

■ outcast [名 n][形 adj]

社会から受け入れられず追放された人、家までも失った浮浪者というような意味です。私などは、「昭和枯れすすき」という演歌を思い出します。

「昭和枯れすすき」の歌詞 ← goo 歌詞へのリンク。
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■ pariah [名 n]

社会からの、のけ者。南部インドの最下層民という古い意味もあります。オンライン辞書 Oxford dictionaries によると、語源は17世紀始めのタミール語(インド南部などで話されている)だそうです。

■ ostracize [動 v]

グループなどから追放する、村八分にするという意味です。古代ギリシャのオストラキスモス(陶片追放)を由来とする言葉。

Yahoo!辞書(大辞泉)「オストラシズム」の説明
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■ shun [動 v]

物や人を意図的に避けるという意味です。

2010年7月4日日曜日

POD に関する紀要論文

Pocket Oxford English Dictionary英語の辞書には、やはり学者も関心を寄せているようで、CiNiiで検索すると色々とヒットします。

※ CiNii:学術論文情報を検索の対象とする論文データベース・サービス。国立情報学研究所が提供

先日お話した Pocket Oxford English Dictionary(POD)についても、いくつかヒットしました。そのうち、無料で読むことができる学術文献は次の2本です。いずれも古い版の POD に関する論文ですが、私は読んでみました。感想を書いてみます。

◇ 今里智晃(1993)「PODに採用された日本語」『広島大学総合科学部紀要 Ⅴ 言語文化研究』19, 33-46.
(新しいウィンドウで開く)

◇ 藤本和子、山本千之(1993)「The Pocket Oxford Dictionary of Current English 改訂第8版の Usage Notesについて」『英語英文学研究』17(2), 87-107.
(新しいウィンドウで開く)

■ 「PODに採用された日本語」

前者は、論題通り POD に採用された日本語についての紀要論文です。たしかに我々日本人からすれば、どうしてこの単語が採用されて、あの単語が採用されないのかと、不思議に感じます。最新の第10版ではどうなったのでしょうか。

調べたところ、第10版では、mikado は無くなりましたが、hara-kiri, ju-jitsu, kamikaze, rickshaw, samurai, tycoon は残っています。ただ、このうち少なくとも tycoon(大君)は、確かに古い日本語かもしれませんが、現在でも business tycoon というような使い方をしますので、言葉の由来はともあれ、POD に載せる意味はあるのではないかと私などは思います。

私は POD 10版では、manga という日本語が載っているのを見つけました。ですが、anime や otaku は載っていませんでした。

■ 「The Pocket Oxford Dictionary of Current English 改訂第8版の Usage Notesについて」

POD 10版にも、Usage Note があります。先ほども、接続詞 like を「のような」という意味で使うことの是非について試しに POD で調べてみたところ、ちゃんと説明が載っていました。学習英英ほどではありませんが、こうした配慮は私のような英語学習者にとってはありがたいです。

それにしても、POD は昔と今では全く違うというネットで知った情報は間違いではなかったのだと、この論文を読んで感じました。

2010年7月1日木曜日

日本の政党の英語名(H22年7月版)

参議院選挙が近づいてきました。そこで、日本の政党の英語名をまとめてみました。各政党のウェブサイトや、参議院、衆議院のウェブサイトの情報をもとにまとめました。

■ 民主党(The Democratic Party of Japan)

世界各国で見られる政党名ですが、"of Japan" がついています。英字新聞では、よく DPJ という略称表記を見ます。

■ 国民新党(The People's New Party)

"The People's" は「国民の」、"New Party" は「新党」。

□ 自由民主党(Liberal Democratic Party)

世界各国で見られる政党名で、特に "Liberal Democratic Party of Japan" と呼ぶこともあります。英字新聞ではよく LDP という略称で書かれてあります。

□ 公明党(New Komeito)

"Fair Party" とか "Clean Party" などと英訳しそうになりますが、これが正しいです。"New" がついているのは、新進党に合流したときに、一度解党したからでしょうか?

□ 日本共産党(Japanese Communist Party)

"Communist" には「共産主義者」という意味のほかに、形容詞で「共産主義の」という意味もあるそうです。

□ 新党改革(New Renaissance Party)

改革クラブ時代は Japan Renaissance Party と名乗っていました。

□  社会民主党(Social Democratic Party)

世界各国で見られる政党名です。

□ たちあがれ日本(The Sunrise Party of Japan)

"Stand up, Japan" と英訳した人がいますが、少なくとも現在は上の訳が正しいです。

□ みんなの党(Your Party)

なかなか一次情報が見つからなかったのですが(同党ウェブサイトや衆参両議院ウェブサイト英語版では見つかりませんでした)、海外メディアはこう訳していますし、同党のウェブサイトのドメインも、www.your-party.jp ですし、たぶんこれで間違いないだろうと思います。

□ 幸福実現党(The Happiness Realization Party)

参議院で議席を持っていたのですね。知りませんでした。

※ 新党大地(New Party Daichi)

公式ウェブサイトの最下部に、Copyright(C)2005New party DAICHI All Rights Reserved. の記載がありました。

※ 新党日本(New Party Nippon)

同党ウェブサイト英語版には New Party Nippon と書かれているのですが、参議院ウェブサイトには The Nippon という表記が見られます。

※ 無所属(Independent)

「無所属」と言うとどこにも所属していないという印象を受けますが、"Independent" と言うと独立して活動しているという印象を受けます。